ダークマターは変？

　原子核のまわりを電子雲が覆っている。
僕の世代は、この原子の姿を「物質の基本的な構造」として習った。

　ダークマターという単語が何なのかわからないまま世間に認知さ
れて久しい。文字通り宇宙には光学的に観測できない物質が存在
するということなのだが、驚くべきことにそれは大量に存在し、むし
ろ我々の知る既知の物質が宇宙で占める割合は微々たるものに
過ぎないと考えられ始めている。
　ダークマターの正体としては素粒子や仮想粒子など様々な候補
が挙げられている。つまり原子の形態をとらない物質。

　原子の構造なんて、もともとは地球圏に存在する物質を対象に
研究して得られた答えだ。当然、地球なんてこの広大な宇宙の中
のちっぽけな星にすぎない。そんな所で原子がポピュラーな存在
形態だからといって宇宙でも一般的だなどとは言えるはずもなか
ったのだ。まさに井の中の蛙大海を知らずだった。ダークマターは
その事実を我々につきつけているのかも知れない。

　数年後、息子が高校にあがる頃には、原子は物質のとる数ある
存在形態のうちの1つとして教わることになるのだろうか。

　しかし、私たちはまだまだ地球に身を置いたまま宇宙を覗き、数
式をいじくって研究を続けている。
　
　机上の空論ならぬ、地上の宙論になってはいまいか。